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小売業における女性の活躍

武石 恵美子氏

法政大学キャリアデザイン学部教授

Profile
旧労働省入省後、ニッセイ基礎研究所などを経て2006年から法政大学。
著書に「雇用システムと女性のキャリア」「職場のワーク・ライフ・バランス」(共著)など。

女性に期待する小売業界

小売業は、伝統的に女性従業員比率が高く、仕事と家庭の両立支援や女性の活躍推進に積極的に取り組んできた企業が多い業界です。顧客も女性が多いことから、女性の能力発揮の推進を積極的に受け入れる風土があったといえます。たとえば、1992年に育児休業法が施行される前から、仕事と子育てを支援する制度整備に取り組んできた業界の一つが百貨店業界でした。販売職を中心とする小売業の現場で女性が重要な役割を担い、女性の就業継続を進めることで、女性が中核的な労働者として育っていきました。こうした小売業界の先進的な取組は、育児休業制度の法制化にあたり、すでに先例があり制度が有効に機能していることを示す証拠となり、政策の推進に重要な役割を果たしました。

小売業界の女性比率が高い背景には、パートタイム就業など柔軟に働く仕組みを積極的に導入してきたこともあげられます。1954年に、当時の大丸百貨店が東京店を開店した際にパートタイマー制を導入したのが、日本企業の本格的なパートタイム就業の始まりとされています。その後、短時間で働く就業形態は多業種にも急速に拡大していきますが、女性の能力発揮のために多様な就業ニーズに対応した勤務制度を先駆的に導入して対応してきたのが小売業といえるでしょう。

たとえばスーパーマーケット業界にはパートタイム就業など正社員以外の従業員比率が非常に高い企業が多く、育児が一段落した後の主婦層の再就職ニーズの受け皿として、女性就業の拡大に貢献してきました。特にスーパーマーケット業は、主婦層が数の面で店舗経営の中核を担っていることに加え、地元の学校行事の情報をもつなど地域で生活する顧客目線に立って店舗運営に力を発揮してくれる主婦層の強みに着目して、経営の観点からもパートタイムの就業機会の提供は大きなメリットがあると考えられてきました。そのため、定型的・補助的な仕事を任せる非正規社員という位置づけにとどまらず、能力に応じて正社員と同様の役割や責任を任せ、高い処遇を与えていくという形で積極的な能力発揮を進める企業も増えています。

小売業において、女性の能力発揮は経営の視点から進めなくてはならない重要政策の一つであり、それゆえに他の業界に先駆けて様々な女性活躍推進の取組を進めてきたといえます。

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vol.5 特別対談
「男女雇用機会均等法から25年」


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