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特集「この人に聞きたい!」コーナー   
小見出し~中堅・中小企業でこそ女性の活躍推進を進めやすい3つの理由~
ポジティブ・アクションについて、有識者の方にお話を伺う「この人に聞きたい!」コーナー。
今回は、企業においてポジティブ・アクションを含めた人事を担当したご経験もお持ちの、麗澤大学 経済学部教授の木谷 宏氏にお話を伺いました。

木谷 宏氏

麗澤大学 経済学部 教授

Profile
    
東京大学経済学部卒業、食品企業入社。米国ジョージ・ワシントン大学ビジネススクール留学(MBA)。マーケティング・スタッフを経て米国現地法人COO(最高執行責任者)。人事部にて成果主義の企画および運用の任にあたる。経営企画部長、CIO(最高情報責任者)。2008年より学習院大学経済学部特別客員教授。2010年4月より現職。学習院大学経済経営研究所 客員所員。鳥取県政アドバイザリースタッフ。第四期東京都男女平等参画審議会委員。港区ワーク・ライフ・バランス推進企業認定審査会委員長。中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程単位取得退学(人的資源管理論)。著書に「社会的人事論 年功制、成果主義に続く第3のマネジメントへ」労働調査会、「在宅勤務 導入のポイントと企業事例」労働調査会(共著)、「ワーク・ライフ・バランス推進マニュアル」第一法規(監修)など。

木谷先生の研究テーマについて教えて下さい。

木谷氏 現在、3つの領域について研究しています。まず一つ目は、ワーク・ライフ・バランスです。私は、仕事と生活の調和という概念は産業革命以降に現れたものだと捉えています。というのも、たとえば農業や牧畜が中心の時代には仕事と家庭は切り離せないものでしたが、近代工業化の過程において、工場に出かけて働く行為と家庭生活とが切り離され、コンフリクトが生まれました。今後、限定正社員やクラウドソーシングなどの多様な働き方が広がれば、この問題は解決できるはずです。
 二つ目の研究領域は、ダイバーシティ・マネジメントです。女性や外国人、高齢者、そして障がいがある従業員等、さまざまな制約を抱えている人は沢山います。その制約について突き詰めると、大半は時間を提供することで解決が可能です。そして、制約のある従業員のために多様な働き方を実現する手段として、ワーク・ライフ・バランスがあると考えています。
 三つ目の研究領域は、人事管理全体です。先ほど産業革命について触れましたが、今日の人事制度は産業革命後のモデルをいまだに引きずっていると感じています。人事管理においては労務構成の前提を「少数の優秀な男性正社員」と「その他大勢」としてきました。今ではこの「その他大勢」が多くなっているのに、人事管理は追いついていません。この問題意識をもって研究を進めています。

先生が、女性の育成について取組を開始されたきっかけは
何でしょうか。

木谷氏 女性の育成について私が最初に取り組むきっかけとなったのは、私が食品企業に勤務していた時に遡ります。バブル経済崩壊後、リストラのために成果主義を導入することとなり、当時米国に駐在していた私が帰国して、このプロジェクトを統括することになりました。私は業績が厳しいなかでも、従業員を解雇するのは最後の手段であると考え、まずは賃金面で工夫できることを進めました。その際に成果主義には良い面と副作用があるだろうと想像していたので、導入前と導入後に従業員の意識調査を行ったところ、その結果を見て大変驚きました。というのも、女性社員の満足度が男性に比べて大変低かったのです。私が勤めていたのは食品を扱う会社であり、消費者には女性が多くいます。それにもかかわらず女性社員が会社内で満足して働いていない状況に危機感を覚えました。そこで、2000年から社内で女性の活躍を推進するポジティブ・アクションを開始したのです。

社員の意識調査の内容に衝撃を受け、ポジティブ・アクションを推進

木谷氏 ポジティブ・アクションの一つとして取り組んだのが女性の管理職登用でした。1%だった女性の管理職比率を3年で5%に拡大する目標を立てました。先ほどお話した成果主義制度の一環として、管理職への登用も従来の年功序列型から公募制にシフトさせていました。これは、入社後6年を経た社員ならば誰でも応募できる制度です。この制度では自己推薦の形をとるのですが、導入当初は手をあげるのは男性ばかり、女性はほとんどいませんでした。そこで、3年間の時限施策としてポジティブ・アクションを開始し、多くの女性を管理職に登用することを目指したのです。5%の女性管理職比率には目算がありました。社員のリストを見れば、たとえすぐに管理職登用制度に手をあげなくても、優秀で管理職候補と思える女性社員が沢山おり、彼女たちを支援できれば5%に達すると考えたのです。

女性社員育成のために、数社が集まってロールモデルを共有

木谷氏 女性社員の育成のためにはやはりロールモデルが必要と考えました。日本でOJT(On the Job Training)が実施されていると言っても、それは製造現場の話であり、ホワイトカラーには体系的な育成がなされていないという調査結果もあります。私が勤めていた企業ではそもそも女性管理職が非常に少ないので目指す姿がありません。そこで、人事の仕事を通じて知り合った他社の方々と協力して、各社の女性ロールモデルを集め、複数社で合同研修を実施したのです。このロールモデルの共有は大変成果があり、現在まで続く試みとなっています。

※「ロールモデル」とは、社員各自がモデルにしたい人材のことであり、性別や職位など特定の人ではありません。また、ロールモデルは必ずしも一人とは限らず、たとえば、発想の豊かな人、交渉能力の高い人、事務処理や綿密な仕事に長けている人など、自分が不足している知識や身に付けたい態度・行動に応じて、複数の人をロールモデルにすることもできます。
 詳しくは、平成24年度 厚生労働省委託事業 「女性社員の活躍を推進するためのメンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」(ポジティブ・アクション展開事業研究会 座長 木谷 宏氏)をご覧ください。
http://www.mhlw.go.jp/topics/koyoukintou/2013/03/dl/07-01_0.pdf

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