特集 特別編集記事をお届け

「この人に聞きたい!」コーナー   
~女性の職域拡大―取り組むメリットと企業における進め方・留意点
ポジティブ・アクションについて、有識者の方にお話を伺う「この人に聞きたい!」コーナー。
今回は、女性が男性の職域に参入し、男女の職場が統合することについてご研究され、実際に工場で勤務したご経験もお持ちの、立教大学 経済学部准教授の首藤 若菜氏にお話を伺いました。

首藤 若菜氏

立教大学 経済学部 准教授

日本女子大学大学院人間生活研究科博士課程単位取得退学。山形大学人文学部助教授、日本女子大学家政学部准教授を経て、現在、立教大学経済学部経済政策学科准教授。
研究テーマは労使関係、女性労働など。賃金水準や雇用保障の差につながる労働者間における職種・職務・キャリアの相違(職域分離)について、分離の形成過程および職域の統合過程を労使関係の視角から研究。著書に『統合される男女の職場』(勁草書房、 2003)。

女性の職域拡大に関する先生のご研究内容を教えてください。

首藤氏 現在の日本は、女性と男性では、賃金や管理職比率において、他国と比較して格差が大きいです。それをどのように縮小させるのかと考えた場合、2通りの方法があります。1つは、現在女性が携わっている仕事の「価値」が、対価として支払われる賃金に見合っているのか、職務内容を再評価しようというものです。職務給の導入や、同一価値労働同一賃金を求める動きとしてあらわれています。2つ目は、女性が、いわゆる男性の職域に進出することが大事だと考え、女性の職域を拡大させ、男女の職場を統合させようというものです。特に、日本的雇用慣行を根強く持っている職域に女性が入っていけば、格差が是正できるのではないかという考え方です。
 私は、そのうち後者について研究し、鉄道業や自動車産業といった従来は男性によってほぼ100%占められていた職場を対象に、特に現場の仕事(現業)に女性が進出していった経緯について研究しました。

日本的雇用慣行を根強く持っている職場に、どのように女性が進出してきたのか、その経緯を教えていただけますか。

男女雇用機会均等法の改正とバブル景気による人手不足の中、
企業は危機感を抱き、取り組みを開始

首藤氏 1985年に男女雇用機会均等法が大幅に改正され、企業に対して、募集・採用、配置、昇進の際、女性を男性と均等に取り扱う努力義務が課されました。その後、日本はバブル景気に突入し、人手不足が深刻になっていました。また、これから到来する少子高齢化への危機感もあったため、1990年代から試行的に女性の採用を開始した企業が多かったようです。ただ、女性の採用に対しては、「女性には無理だ」や「そんなこと(男性の仕事)をやらせるなんて、かわいそう」などという思い込みや言われなき不安感が、特に現場の労働者や管理職らを中心に根強く残っていました。しかし、経営トップによる判断で、思い切って採用を開始しました。また、1999年より、その努力義務が差別禁止となるとともに、女性の深夜労働・残業や休日労働の制限が撤廃されました。この法改正により、法律上、男女均等に採用することが求められるようになりました。

実際に女性を採用してみると、言われなき不安や抵抗感は解消へ
予想していなかった改善にもつながる

首藤氏 私は、人事担当者や現場で働く従業員に対して聞き取り調査を行ってきたのですが、実際に女性が働き始めると、言われなき不安感や共に働くことの抵抗感は、解消されていったという声がほとんどでした。一部の職場では、重筋労働など、女性には体力・筋力面で難しい職務も残っていましたが、予想を超えて女性ができる仕事の範囲は広かったようです。また、女性が就けない重筋労働は、男性にとっても厳しい職務であり、改善の対象とするべきものです。このため、今後ロボット開発などによるIT化が進む中で、そうした仕事はますます減少していくと思われます。
 また、男性しかいなかった職場に女性が働くようになってから、職場の雰囲気が活き活きとして、従業員全体の身だしなみが良くなり、整理整頓が改善されたという声も共通して聞かれました。身だしなみや整理整頓といったことは、安全衛生を保持するためにも重要な要素であり、このような効果もあるのかと驚きました。これは、経営者側にとっても予想していなかった効果だったようです。

女性が男性の職域で働くメリットとして、何が考えられるでしょうか。

首藤氏 まず、賃金や昇進の機会が男性と同等となることが挙げられます。例えば、事務職の場合、総合職と一般職のようにキャリアコースが分かれていることが多く、女性が多いコースは賃金や昇進の機会に制限があります。そうしたコースで働く女性は、将来の展望が描けなかったり、結婚・出産を機に辞めてしまったようです。一方で、現場で働く女性は、男性と同等の労働条件で働いて、同等の賃金や昇進の機会が与えられており、やりがいを持って働いていました。私が調査した企業では、以前から女性が多く働いてきた事務職と比べて、男性が多い現業職場で新たに働き始めた女性たちの方が、長い期間働き続ける傾向がみられました。
 特に現業職場は、事務職にはない深夜勤務等があるなど、ハードな一面がある一方で、鉄道業のケースのように突発的な残業が少なく、シフトが事前に決まっているために生活面のマネジメントがしやすい、といった声も聞かれました。

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