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「この人に聞きたい!」コーナー   
~女性活躍推進法に込めた想いと企業への期待
ポジティブ・アクションについて、有識者の方にお話を伺う「この人に聞きたい!」コーナー。
今回は、今年8月末に成立した「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」について、法案の作成にご尽力された、厚生労働省 雇用均等・児童家庭局 雇用均等政策課 課長の小林 洋子氏に、本法に込めた想いと企業への期待についてお話をお伺いしました。

小林 洋子氏

厚生労働省雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課長

Profile
平成元年に労働省(現 厚生労働省)入省後、主として労働行政、特に職場における男女雇用機会均等問題、パートタイム労働問題を担当。平成15年度から17年度まで石川県小松市に助役として出向。その後、内閣府にて少子化対策・高齢社会対策担当、男女共同参画局推進課長(仕事と生活の調和推進室参事官)を歴任し、現在、厚生労働省雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課長。

今回制定された女性活躍推進法では、301人以上の労働者を雇用する事業主に対して、第1ステップとして女性の活躍状況の把握・課題分析を行うこと、第2ステップとして行動計画の策定・届出・社内周知・公表を行うこと、第3ステップとして自社の女性の活躍に関する情報を公表することを義務付けていますが、このような法律の導入経緯と狙いを教えてください。

女性が十分に活躍できていない日本で、女性の活躍は日本の成長戦略の柱の一つ実現するために法的枠組を構築

現在日本は、女性が十分に活躍できているとは言えない状況にあります。第一に、女性の就業率は、出産・育児期の女性の就業率が一度下がる、いわゆる「M字カーブ」となっています。これは、出産・育児期に仕事との両立が難しく、離職する女性が多いためですが、このような女性の中にも、就業希望のある女性は約303万人いると言われています。第二に、女性就業者の雇用形態について見てみると、非正規で就業する女性の割合は男性と比較して高く、56.6%となっています。特に出産・育児を機に一度退職し、再就職する場合に非正規雇用となる傾向が強いようです。第三に、管理職に占める女性の割合についても、全体として増加傾向にはあるものの、国際比較では欧米や他のアジア諸国と比較すると非常に低く、女性が意思決定層になかなか入れていない状況にあります。

安倍政権では、いまだに活用されていない資源の最たるもの、それが女性の力だと考えています。このため、女性の活躍推進に焦点が当てられ、平成26年6月に閣議決定された成長戦略「日本再興戦略」の中には、女性の活躍推進に向けた新たな法的枠組を構築する旨が盛り込まれました。厚生労働省では、その年の臨時国会に向けて法案提出を用意したのですが、残念ながら衆議院解散によりいったん廃案となってしまいました。しかし今年の通常国会に再提出し、8月28日に成立に至りました。

―安倍政権では数値目標としていわゆる「202030(※1)」が掲げられていますが、実現させるためには今後さらに取組をスピードアップさせる必要があると思われます。しかし、ノルウェーやフランスなどで導入された「クオータ制(※2)」のような数値目標が、今回成立した法律に定められなかった理由は何でしょうか。

「202030」の目標には、2つの意味があると考えています。1つ目は、いろいろな分野で意志決定層に女性を登用することが社会的に望ましいためそれを目指すという意味の目標、2つ目は、女性活躍に関する様々な取組の結果を図る指標としての数値です。現在の日本で重要なのは、女性管理職の数を機械的に増やすことではなく、まずは女性が活躍できるような環境になることだと考えています。女性管理職比率は、結果指標としては有効だと思いますが、絶対的な数値目標としてしまうと、管理職としての技能が備わっていないのに登用した結果、うまくいかなかったため、やはり女性はダメだと思われてしまうケースもあるようです。「クオータ制」は機械的に数値を達成するだけのものではありませんが、そのように誤解して取り組んでしまう可能性もあります。そうではなく、各社で今の女性の活躍状況を把握し、課題をとらえて取り組むことこそが大事だと考えています。

また、管理職になるためには、その前に育成や採用など色々なことをやらなければなりません。それらを飛び越えて機械的に女性管理職の数を増やし、結果失敗してしまうのでは、本末転倒になってしまいます。女性管理職をただ増やせばよいのではなく、その前段階が重要だと考えています。

※1 2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にするという国の目標
※2 取締役会において男女双方が一定の割合以上になることを求める制度

―企業の中には、ここ数年で女性管理職の数が一気に増えたところもあります。このようなケースでは、成功の秘訣は何だとお考えですか?

経験の足りない部分をしっかりサポートするシステムが重要だと思います。女性管理職を増やすため、女性従業員に少し背伸びをして仕事にチャレンジしてもらい、また、企業も女性を管理職に登用して終わりではなく、その後をしっかりサポートすることで、女性管理職として成功する可能性が高まると考えています。女性管理職の登用については、それぞれの企業に合ったやり方があると思います。それぞれ、どのようなやり方が適切か、考えていただきたいと思います。

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