特集 特別編集記事をお届け

「この人に聞きたい!」コーナー   
~女性のキャリア形成に大切なこと~
ポジティブ・アクションについて、有識者の方にお話を伺う「この人に聞きたい!」コーナー。
今回は、キャリアデザイン論、学習環境デザイン論を研究していらっしゃる、産業能率大学 情報マネジメント学部准教授の荒木 淳子氏にお話を伺いました。

荒木 淳子氏

産業能率大学 情報マネジメント学部 准教授

Profile
東京大学大学院人文社会系研究科(社会学)、株式会社日本総合研究所研究員、東京大学大学院情報学環助教等を経て現職。博士(学際情報学)。GCDF-Japan認定キャリアカウンセラー。専門はキャリアデザイン、学習環境デザイン。主な著書に「キャリア教育論」(共著、慶應義塾大学出版会)、「ここからはじまる人材育成-ワークプレイス・ラーニングデザイン入門」(共著、中央経済社)、「企業内人材育成入門」(共著、ダイヤモンド社)がある。

キャリアに関する先生のご研究内容を教えてください。

荒木氏 働く人や大学生のキャリア形成を支援する環境づくりが大きなテーマです。働いている人のキャリア支援を、職場の中と外でどう作るかということを研究しています。現在は、子育て期の働く女性のキャリア形成支援について、女性自身がどのようにキャリアを形成していくか、と職場がどのようにマネジメントしていくかの両方の側面から研究を行っています。具体的には、上司の関わりが女性社員のキャリア展望(長期的な観点から今後どうなっていきたいか)にどのように影響していくかを分析しています。ダイバーシティ推進が主流になっている中、女性だけに特化した支援はもう古いという風潮ですが、個人的には女性活躍推進の支援はまだまだ必要だと考えています。育児は過渡期を過ぎると当事者意識が薄れていくところがあって、自分が当事者の時は問題意識を持っていても、子どもが成長して手を離れると当事者意識が持続しないことも、仕事と育児の両立の問題が進んでいかない原因の一つではないかと考えています。

各世代におけるキャリア教育の意義について教えてください。

荒木氏 元々キャリア教育は学校から社会へ出ていくことへの支援なので、高校生時代までのキャリア教育をより充実すべきと考えています。今は21世紀型スキルのように、変化に対応しながら常に学び続け自分のキャリアを作っていく力を身に付けることが求められています。キャリア形成は、いろいろな人と関わり、いろいろな情報を仕入れて、自分の考えを変えたり、振り返ることの繰り返しなのですが、そのような力が一番身に付くのは学校教育を受けている年代です。職業体験や社会人の話を聞くことも良い経験ですが、本来の教科科目の中からコミュニケーション能力や情報を読み取る力をつけていくことが大切だと考えています。
 大学生のキャリア教育は就活がメインになってしまっていますが、ほかにも、社会に出た後に、他人と自律的に働くにあたって大切なことを身に付けて欲しいと考えています。例えば、コミュニケーションや他者理解、社会の一員として責任を果たすという意識などです。多くの大学生は、社会の中で生きているという実感が少ないように感じます。学生という役割認識の中だけでは、自分が社会の役に立っているとか、責任を果たしていることを気づきにくくなっています。アルバイトを経験することで、それを実感する人もいますが、アルバイトだけだと経験の質が限られてしまうので、インターンを経験するとか、多くの人と関わって社会の中での自分の役割を実感する経験をすると良いと思います。
 20代から30代では、一度立ち止まって自分を考える機会や支援があると良いと思います。社会人大学院やプロボノなどで、社外の経験を積むことも良いのではないでしょうか。40代以降は自分が変わることに抵抗が強い年代になってくるので、自分の歩んできたキャリアや環境を変えていくことは難しいかもしれません。しかし、仕事も社会も変化しているので、今後の自分の役割をどう果たしていくかを考えることが必要になってきます。

女性がキャリアを積んでいく上で、意識すべきことは何でしょうか。

荒木氏 女性のキャリア形成に関する調査研究では、なるべく20代の早い段階において仕事で経験を積み、やりがいや達成感をつかんでおくと、ライフイベントや困難に直面した時も仕事を続けていける意欲につながることがわかっています。私がインタビューした小売業の会社の例では、20代後半でリーダーや店長を経験し、ある程度専門性を身に付け一人前というポジションになっていたので、育休のブランクを挟んだ後も、スムーズに復帰しキャリアを形成することができていました。業種による違いはありますが、20代のうちにスキルを身に付けて、自分の存在価値を作っておくことが大切だと思います。一方で20代は出産に適した年齢でもあるので、子どもを持つことを考えている人は、より一層、早い段階で仕事の経験を積めるように意識することが良いのではないでしょうか。
 30~40代は職場でも家庭でも責任が重くなってくるので、自分なりのバランスを見付けていく時期です。育児と両立している人は、そのペースが自分に合っているのか、もっと仕事がしたいのであれば、自ら手を挙げて、仕事における役割を果たすべきです。育休は上手に使うと、キャリアの振り返りやスキルアップの機会に使える良い機会になります。経済的な面から難しいとは思いますが、男性もこの時期に立ち止まる機会や勉強する時間を持つことができると、その後のキャリアに良い影響をもたらすのではと考えています。それは、男性本人のキャリア形成にとっても良い機会になりますし、女性の出産や育児によるブランクに対する不公平感の解消にもなります。大手企業が、週休3日を導入したり、3年間の休職の制度を導入していることからも、社外活動が社員の成長やキャリア形成に有益だということが浸透しつつあるのではないでしょうか。
 50代以降は、いろいろな意味で後輩のロールモデルの役割になる年代です。時代の変化が速い中で50代と20代、30代とでは意識も働き方も大きく変わっています。しかし、長期的なキャリア形成において、先輩からのアドバイスや仕事の意味づけは成長に不可欠でもあります。ぜひ、自分の成功体験を押し付けることなく、視野を広くして後輩と関わってほしいと思います。

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