WEBマガジン EVOLUTION vol.2 中小企業 アドバンス

第2回 サイボウズ株式会社

 グループウェア「サイボウズOffice」シリーズ等、ソフトウェア開発・販売を手がけるサイボウズ株式会社。自分のライフスタイルの変化に応じて働き方を選択できる選択型人事制度の導入をはじめとする様々な取組が、離職率の低下を実現させています。人事部門の責任者として制度構築に携わってきた取締役副社長の山田 理氏と、ライフ重視の働き方(DS制度)を選択してMBAを取得された椋田亜砂美氏にそれぞれお話を伺いました。

副社長に聞く

両立支援制度の充実と選択型人事制度の導入で
離職率低下を実現

山田 理氏

サイボウズ株式会社

取締役副社長

山田 理
サイボウズ株式会社
取締役副社長

PROFILE

1992年大阪外国語大学卒業後、日本興業銀行に入行。興銀では、主にディーリングと営業の仕事を担当。縁あって、2000年にサイボウズへ入社、同社のIPOに向けての実務を全面的に行う。その後、事業部長の任に就くが、人事部門の責任者として一貫して同社の人事制度の構築を手掛ける。2007年4月に取締役副社長に就任、現在に至る。

長期に渡って活躍できる会社をめざし、人事施策を開始

 サイボウズ株式会社(本社:東京都)は、ソフトウェアの開発・販売・保守、ならびに情報通信・情報提供に関するサービスを展開。創業は平成9年という若い会社ながら、スタート時の3名から現在は従業員200名を超えるまでに成長し、ここ5年は倍増という勢いである。
 「とくに2001年から2004年にかけて業績が一気に伸びたので、そこで従業員も5名から50名へ、その後70名、80名と増えていきましたが、現在は世の中の景気が落ち込んでいるわりには、業績は横ばいで推移しているという感じです」と副社長の山田 理氏。10年前、ITベンチャーの将来性にひかれ、銀行員から転身。同社の人事部門の責任者として一環して人事制度の構築に携わってきた。
 「当初はアウトソース化を進めていて、サポート業務だけでなく、開発を外注することも多かったのですが、そうすると最終的に独自のノウハウが築積されず、クオリティを上げることができていませんでした。また派遣社員から正社員になる人も多く、見ていると、長く働くことで主力化していっていることがわかりました。そこで社内で人を育て、外注していたことをすべて社内で行うインハウス化に方向転換しました」
 そのためには長く働いてもらう必要があるが、離職率が20%を超える年もあるなど、もともと離職率は高かった。そこで山田氏をはじめとする人事部では、長期にわたって活躍できる会社をめざして、2006年7月から「両立支援制度の充実」や「選択型人事制度の導入」などの取組を推進。20%を超えていた離職率は2010年1月末には8%まで低下した。

回数無制限、最長6年間の育児・介護休業制度

 サイボウズの両立支援制度をみると、育児休業、介護休業ともに休業期間がかなり長い。妊娠が判明したら産前産後休暇に入ることができ、育児休業は小学校就学まで最長6年間、介護休業も最大6年間、いずれも回数を問わず取得できる。平均年齢が30歳と若い社員が多いこともあり、介護休業の取得者は出ていないが、育児休業はこれまでに16名が取得(うち男性1名)、2回取得した社員も3名いる(2010年6月末現在)。青野社長も8月末に育児休暇を取得し、サイボウズ社2人目の男性育児休業者となった。看護休暇も日数の制限なく、子どもの看護で会社を休むことができる(「主な両立支援制度」参照)。
 「6年間休めるといっても、6年休む人はほとんどいなくて、実際には早く戻ってきたいということで、短時間勤務を利用して職場復帰を早めるほうがはるかに多いですね。ただ「6年休める」制度があることで、安心して出産・子育てや介護に臨むことができるセーフティネットになるでしょうし、これは「辞めることなく長く働いてほしい」という会社からのメッセージでもあります。仮に6年間休んだり、働く休むを繰り返したとしても、コスト的には辞められるよりずっといいですし、あとは6年後に復帰してくる人を受け入れる覚悟ができているかどうかだけですね」
 同社では復職支援として、「サイボウズLive」というグループウェアを使い、事前に社内の情報を共有できるシステムになっている。
 「もともと長期でコツコツ学び成長する人を採用していますし、サイボウズで働きたいと思っている人であれば、休業を取得して間が抜けたとしても、復職してから勉強すればいい。もちろん若干のアイドリング期間は必要でしょうが、新卒のときと比べたら短くてすみますし、いま見ているかぎり問題はないと思います」

ワーク重視かライフ重視か、一年単位の働き方の選択を可能に

 人事施策のもう1つの柱が、2007年2月から導入している選択型人事制度。ワーク重視の「PS制度」(時間に関係なく成果を重視した働き方)、ライフ重視の「DS制度」(所定労働時間を基本とした働き方)のうち、自分のライフスタイルに合わせてどちらかを選ぶことができる。
 PS制度とDS制度では、まったく別の評価・報酬システムが構築されている。PS制度は絶対評価と相対評価の組み合わせにより5段階で評価・報酬が決まり、給与は10段階の階層別に、DS制度は相対評価により3段階で評価・報酬が決まり、給与は年功型になっている。
 短時間勤務はDS制度に含まれるが、社員自身が期間や1日の労働時間(短縮時間)を決めることができ、さらに育児・介護以外の理由でも利用可能。育児の短時間勤務者は6名(うち男性1名)、育児・介護以外の理由での利用者も2名いる(2010年6月末現在)。
 「もともとはPS制度だけでしたが、働き方の多様化に対応するためにDS制度をつくり、選べるようにしました。そのアイデアの元になったのは、銀行員時代の総合職と一般職です。DS社員は基本的に残業をしないので、フォローが必要な場合はPS社員で埋めていきますが、PS社員にはみなし残業代を給与に含め、裁量労働による働き方をします。双方をきちんと評価するシステムができていますので不満の声は聞かれません。また当社は社内結婚が多く、これまでに24組ぐらいありますが、身近で自分の妻が働いているケースも多いので、短時間勤務者に対する理解があるのかもしれません」

サイボウズ流 部門間コミュニケーション

 サイボウズでは社員同士、部門間のコミュニケーションを図ることを目的に、クラブ活動や飲み会に補助を出したり、社内で飲みながら仕事の話ができる「仕事BAR」を設けている(「福利厚生」参照)。クラブ活動には、居酒屋で飲みながら「マリオカート」に興ずる任天堂DS部や、掃除と飲み会がセットになった掃除部などもある。
 「掃除はもともと総務部の仕事でしたが、手伝いを呼びかけても集まらない。そこで総務部の女性社員が、クラブ活動にしようと「心も一緒にデトックス」と言って飲み会を付けたら人が集まり、今では最大クラブになっています。これらの活動はすべてグループウェアで公開することになっていますが、必ず写真を付けるようにお願いしています。楽しそうにやっている雰囲気をみんなが目にすることで、社内になんとなく楽しそうな雰囲気が出てきます。これが大事なことだと思います。コスト的にも半年で何十万のレベルですし、ほかの会社が社員旅行などに使っているお金に比べたら全然少ないですよ」

自社製品リモートサービスで在宅勤務制度も導入

 前述した人事施策と合わせ、これらのユニークな福利厚生が、離職率の低下に寄与していることが伺える。さらに働きやすい職場環境をめざし、試験的ではあるが今年8月から在宅勤務制度を導入。申請をすれば月4回を上限に、在宅で仕事ができるようにした。「今後、世の中の企業がワーク・ライフ・バランスに対して、今以上に取り組んでいけば、在宅勤務は避けて通れない課題となるはずです」

人事制度は会社からのメッセージ

 「本来は、社員1人1人に対して人事制度はあるべきだと思います。より多くの人により成長してもらいながらより長く働いてほしい。みんなで活き活きと楽しく働きたい。人事制度はその会社の思いを実現するための手段なのです」「100人いたら100通りの人事制度を用意するのが理想ですが、それではコストがかかりすぎてしまうので、まずは選択肢を増やすという方向で、社員が長期にわたって活躍できる会社にしていきたいですね。そしてビジネス戦略としては、まず中国やインドといった人口の多い新興国、そして欧米、国内と、これら3つのエリアを狙ってグループウェアの販売拡大を図り、グローバルシェアを広げていきたいと考えています」

◆一部、山田副社長「まるボウス日記」http://cybozushiki.cybozu.co.jp/marubozu/より抜粋

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