WEBマガジン EVOLUTION vol.2 リレーエッセイ

毎号各業界でご活躍の方にポジティブ・アクション推進に向けて自由にご発言いただくこのコーナー。
第2回めは、法政大学キャリアデザイン学部教授の武石恵美子氏に今号のテーマでもある「ワーク・ライフ・バランス」を中心にご執筆いただきました。

第2回 武石 恵美子

ワーク・ライフ・バランスとキャリア開発支援

吉本 明子氏

厚生労働省 雇用均等・児童家庭局 雇用均等政策課 課長
PROFILE

法政大学キャリアデザイン学部教授。
旧労働省入省後、ニッセイ基礎研究所などを経て2006年から法政大学。
著書に「雇用システムと女性のキャリア」など。

進むワーク・ライフ・バランスへの取組

 先進国の中で日本の女性労働力率が極端に低いわけではありません。しかし、3歳未満の子を持つ女性の労働力率は極めて低水準です。日本は「女性が」働きにくいというよりは、子育てなどの仕事以外の責任を果たそうとする人が働きにくいといえそうです。
 男性の育児ニーズの高まりや、高齢化に伴う介護負担の問題など、仕事以外の責任と仕事の両立は、男女共通の課題になっています。このため、ワーク・ライフ・バランスの実現が、国の政策のみならず、企業においても重要な人事政策となってきました。仕事も大事だけれど、それ以外の責任もきちんと果たしていきたい、という働く人の就業ニーズの変化に合わせた取組といえます。

両立支援とキャリア開発支援

 企業において仕事と生活の両立支援への取組が進む中で顕在化してきた問題が、生活にのみ重心を置こうとする従業員の存在です。もちろん、仕事よりも生活に多くの時間を配分しなくてはならないライフステージを多くの人が経験します。しかし、それは長期的なキャリア形成の中で仕事への関わり方を一時的に変えるというものであって、仕事への取組姿勢が疑問視されるような働き方になってしまうと、経営的に問題が大きくなります。
 例をあげると、育児休業や短時間勤務を利用できるだけ利用して、利用し終えたところで自分の次のキャリアを考える、といったケースです。これでは、制度を提供する意味がありません。
 とはいえ、この背景には、企業側の対応にも問題があります。つまり、従業員に対して、長期的に自身のキャリアを描くことができるようなキャリア開発支援を疎かにしているために、従業員は短期的な視野で制度利用などを選択してしまっているのです。

個人が変える「働き方」

 企業におけるワーク・ライフ・バランス施策の中心は、かつては休業や短時間勤務など両立支援のための制度整備にありましたが、両立支援制度が充実しても女性の就業状況が変化せず、仕事と生活の葛藤が解消しない現実から、長時間労働に象徴される「働き方」を見直すことの重要性が認識されるようになってきました。やるべき仕事を前提に時間を投入するのではなく、一定の時間の枠組みの中で仕事を効率的にこなして時間生産性を高めることが企業のワーク・ライフ・バランスの取組の本丸となってきています。
 そのために重要なのは、働く人が主体的に仕事に向き合い、効率的に仕事をする意識を持つことです。ノー残業デーなどを形式的に導入しても、個人の働き方が変わらなければ意味がありません。
 個人が長期的なキャリアビジョンをもちながら、そのビジョンの中でその時々の仕事と生活のバランスを選択し、個人にとっても組織にとっても効果的な形で働き方を選択することが重要です。ワーク・ライフ・バランス施策が、従業員、企業双方にとって効果的に運用されるためには、従業員のキャリア開発を組織として支援することが求められているのです。

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