WEBマガジン EVOLUTION vol.2 グッドプラクティス企業

第2回 シナノケンシ株式会社

17年前に第1子の育児休業を取得し、第2子出産後は主任に、第3子出産後は係長に昇格。そして昨年、同社初の女性課長に就任するなど、出産・子育てをしながらキャリアアップを図ってきた工藤ルミ氏。これまでのご自身の道のりと、育児休業に対する職場環境の変化について伺いました。

活躍している女性に聞く

「働いていて面白い」「働き続けたい」という信念を貫く

工藤 ルミ氏

シナノケンシ株式会社

モノづくり本部 調達統括部 購買課 課長

工藤 ルミ
シナノケンシ株式会社
モノづくり本部 調達統括部 購買課 課長

PROFILE

1988年入社。2003年3月 主任クラスに昇格、2007年1月 係長に昇進。
2008年2月 課長補佐、2009年3月 課長に就任、現在に至る。
お子さんは長男(17歳)、長女(12歳)、次女(5歳)。

「出産したら辞める」時代、家族のサポートを得て仕事を続ける

-最初は、どのような部署に配属されたのですか。
工藤氏 1988年に入社し、当時の購買課にアシスタントとして配属されました。入社前までは購買とは何をしている部署かわかりませんでしたが、配属されて仕事をするうち工場の中でとても重要な役割を担っている部署であることが分りました。

-配属された部署に、女性の先輩はいましたか。
工藤氏 男性2~3人に女性アシスタント1人というスタイルだったので、女性の先輩もいました。当時は結婚するだけでも会社を辞める時代でした。また、育児休業を取っても復職せず辞めてしまう先輩がたくさんいました。私の前に育児休業を利用し復職された方は数人しかいなかったと聞いています。私が第1子を出産したのが1994年で、ちょうど男女雇用機会均等法の改正後でした。私は第1子の育児休業を10カ月取りましたが、会社としても制度導入をして間もない頃だったと思います。

-そのような環境の中でも、働きつづけようと思われたのですね。
工藤氏 私の母もかつて正規雇用で働いていたので、日中母親が家にいないのは、私にとって不思議なことではありませんでした。私自身も出産を機に会社を辞めるという考えはありませんでした。子どもができたときに家族と相談をし、自宅の近くにいる実家の両親の協力を得て育児休業し、復職することができました。

第2子、第3子出産時には、育児休業を取得する女性も増加

-ご家族のサポートはありがたいですね。最初に復職されたときは、いかがでしたか。
工藤氏 復職した翌年に、女性=アシスタントというスタイルが崩れ、男性と同じように担当を持つことになりましたが、私の場合はアシスタントとしての経験が長く、仕入れ先に関する情報も十分持っていましたので、問題なくこなすことができました。
 第1子のときは家事や育児のことが心配で仕事をするのにも余裕がありませんでした。1998年に第2子の育児休業を10カ月取得しましたが、その頃は育児休業制度の認識も広まり多くの女性が育児休業を取るようになっていました。育児休業を取る先輩の姿を見たり、会社もフォローしてくれるようになり、復職後、積み上げてきた実績を踏まえ、2003年に主任の昇格試験を受けました。「子どもがいるから今のままの資格でいい」ではなく、チャレンジできるのならチャレンジしたいと考えました。

-前向きな姿勢は、あとに続く女性たちの励みにもなりますね。また、育児休業を取る女性も増えていったのですね。
工藤氏 徐々に育児休業を取る女性が増えてきたことで、会社の中にも育児休業を取り復職することが理解されてきました。この制度が理解されるようになるまでには、人事の方々の努力がとても大きいと思います。とくに男性の理解が進みました。2005年に第3子の育児休業を1年2カ月取りましたが、そのときにはほとんどの女性が育児休業を取得していましたし、休業明けには人事による復帰プログラムが用意されていて、復帰に対する心配な気持ちを会社側で支援してもらえたので、すごく良いプログラムだと思いました。また、復職後10カ月ほど時差出勤制度を利用しました。朝遅い出社のスライドで、7時間45分働くというかたちです。

係長に昇格し、「周りに影響を与えられる」ことを実感

-17年前と比べると、大きく変化しましたね。短時間勤務も利用しやすくなりましたか。
工藤氏 昔は帰宅する短時間勤務者にため息をつく社員もいましたが、今は短時間勤務者を考慮しながらチームや仕事の割り振りを考えますので、心理的にもずいぶん利用しやすくなったと思います。私も第3子の復職の際は両親にあまり負担をかけられなくなったので、時差出勤を利用しました。
 2007年に係長になってからは、朝礼に出るため通常勤務に戻しました。

-係長になられて、「これまでと違うな」と感じたことはありましたか。
工藤氏 係長になると上司からの命を受け、部下への指示、指導も発生します。はじめはあらゆることに責任の重さを感じました。また、女性初の係長でもあったため、とても気を使いました。反面係長になることで、自部署に限らず他部署を巻き込んでの仕事ができ、与える影響の大きさを実感しました。

-職場環境として、かつては男女の役割分担意識が強かったとお聞きしましたが、提案することに不安を感じませんでしたか。
工藤氏 入社の頃にあったような男女差意識はその頃には薄れていましたし、不安は感じませんでした。もともと仕事をすること自体が好きで、「仕事はやりやすく改善しなければいけない」という気持ちが強くありました。

女性初の課長に。子育て経験も活かしつつ、部下のやる気を引き出す

-そして現在は課長で、しかも女性初と伺っていますが、ご苦労はなかったですか。
工藤氏 一昨年の2月に課長補佐、そして昨年3月に資材課の課長になりましたが、もともと資材畑が長く、私なりに「私ならこうしたい」という考えもあったので、苦労という苦労は感じませんでした。会社制度に新管理者教育プログラムがあり、係長や課長に昇格する際に必ず研修を受けるので、基礎的知識は教育してもらえます。ただ、今年から購買課の課長になり、まだ業務を熟知していない部分があるので、女性4名、男性9名の部下たちは、物足りなく感じているかもしれません。部下に不信感があると管理が難しくなるので、いまは業務知識のなさを、勉強と部下とのコミュニケーションでカバーしているところです。

-マネジメントする側として、どのようなことを心がけていますか。
工藤氏 仕事内容を十分に理解せずに仕事をしている場合も多いので、今まで私が蓄積した経験や勉強した知識を教育し、調達人材を厚くしていきたいと考えています。その際、強引に押し付けるのではなく、ある程度の目標を一緒に考えたり、背景を理解させることで、仕事にやりがいを感じてもらえるようしたいです。やる気にさせるということは、ある意味子育てと似ている部分もあり、少しは17年の子育て経験が活かせるかなと思っています。

-入社された頃と、現在で、ご自分の将来像に変化はありましたか。
工藤氏 大きく変化しましたね。入社当時は育児休業制度も整っていませんでしたし、事務職で入った人は事務職で終わるという風潮が残っていました。今は男女にかかわらず資格によりキャリアデザインプログラムを受けることができるので、女性にとっても自分の将来を考えやすくなりました。

仕事は前向きな気持ちで、両立は自分に合ったペースで

-キャリアアップを考えている後輩女性へアドバイスをお願いします。
工藤氏 女性は細かいところまで気を配れる人が多いので、「管理する」仕事は女性に向いていると思います。また、自分の適性が活かせるところでステップアップするのもいいと思います。くじけそうになったら、「いまを頑張れば、必ずつぎが見えてくる」と、物事を前向きに考えることです。部下にも前向きで行こうとよく話しています。じつは今年は小学校の役員もやっているので、私自身が両立にくじけそうになることもあるんです。どうしても後ろ向きになってしまうときは、家族や同世代の女性に相談して気持ちを晴らし、マイナス思考を溜めないようにしています。

-唯一の女性課長としては、ほかの女性と共有しあえない部分もあるのではないですか。
工藤氏 確かに会社には同じ立場の女性がないのでつらいこともあります。しかし同業者でなくても、地域には女性の学校の先生やお医者さん、校長先生などたくさん活躍されている方がいらっしゃいます。そのような方々を見習って、「私にもできるかな」と励みにしています。  今は子育てしながら働くのは、この地域では当たり前になりました。女性でも働きつづけることへの意識が変わってきていると思います。

-最後に、両立をめざしている女性にメッセージを。
工藤氏 「働くことが面白い」「仕事を続けたい」といった意欲がいちばん必要です。周りの協力がある・ないなど一人ひとり環境が違うので、自分に合ったペースで計画することが大切だと思います。仕事と育児や家事の両立は大変ですが、親が頑張っている姿は子どもにも伝わると思います。私自身、親の頑張っている姿を見てきましたので。「これをやりたい」という目標や信念をもって働くことで、子育てだってきちんとできると思うのです。

インタビューを終えて

シナノケンシ社は絹糸紡績の産業史を持つ老舗企業である一方、60年代から産業構造の変化を予測して精密電機事業に転換し、近年では経済危機の波を受けながらも、インド販売子会社、中国工場を新設しています。人事制度の取組においても、独自の先見性ときめ細かさの両輪で、一歩先んじた取組を進めており、数多くの財団職員のリクエストにより今回の取材が実現しました。堤氏の次なる取組は、グローバル人事統括。工藤氏に代表される、懐深くポジティブな日本女性が活力源となり、多様で多彩な人財が資産となって、グローバルに展開する同社のますますのご発展をお祈りします。

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