WEBマガジン EVOLUTION Vol.3 中小企業 アドバンス

第3回 株式会社コヤマドライビングスクール

首都圏に4つの公認自動車教習所を運営するコヤマドライビングスクールでは、業界に先駆けて女性教習指導員の採用を始めるなど、社長自らが女性社員を重要な人材と位置づけて女性活躍推進に取り組んでいます。代表取締役社長の小山 甚一氏と、二子玉川校で教習指導員をされている森 早穂氏にそれぞれお話を伺いました。

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10年後は男女比率半々、管理職比率も半々の
自動車教習所にしたい

小山 甚一氏

株式会社コヤマドライビングスクール

代表取締役社長

小山 甚一
株式会社コヤマドライビングスクール
代表取締役社長

PROFILE

1970年4月入社。1972年2月取締役。1989年12月代表取締役副社長。1997年3月より代表取締役社長に就任。現在に至る。特定非営利活動法人自動車学校マナー推進協議会の理事長も務めている。

1986年、業界に先駆けて女性教習指導員を採用

 コヤマドライビングスクールは、1957年に東京で3番目に誕生した公認自動車教習所として、二子玉川校、石神井校、秋津校、綱島校の4校を運営している。少子化の影響により、毎年10校以上が閉校に追い込まれている中、入校者数が増え安定経営を続ける。2010年の入校者数が全校で約2万3000名、とくに普通車の入校者数では、二子玉川校は全国1位である。飛躍的な業績を上げている大きな理由の一つに、女性教習指導員の活躍が挙げられる。
 「女性の教習指導員の採用を始めたのは、ちょうど男女雇用機会均等法が施行された25年ほど前です。きっかけはヨーロッパ視察旅行で印象に残ったことがありました。旧ソ連では地下鉄の運転手が全員女性、フランスへ行ったときにも女性がすごく大きなトレーラーを運転していました。知人の奥さんは前夫と離婚したとき、生活のためにどのような仕事を、と考えたときに最初に『タクシードライバーになろうと思った』と言っていました。海外の女性の働きぶりを目の当たりにして、世の中男女半々なのだから会社も男女半々が自然ではないかと痛感しました。
 実際に指導員を募集してみると意外にも女性の希望者が多く、脈があると思いましたが、最初は『どうして女性を指導員にするのか』と批判的な印象を持たれたりもしました。マスコミにいろいろ取り上げていただきました。当時はそれほど珍しいことだったのだと思います」
 女性を採用したあとも大変だった。更衣室、トイレなど女性用の施設はないない尽くしで、まずは環境整備から始まった。女性指導員の増加に伴い、女性入校者が増え、必然的に教習生数も増えた。「クライ・コワイ・ダサイ」という教習所のイメージが、「明るく・楽しく・おしゃれな」に変わり、評判もよくなった。男性社員のモチベーションも上がり、職場全体の雰囲気も明るくなったという。現在、指導員のうち男性254名、女性111名と、女性指導員が3割を占めるまでになっている。

雇用形態にかかわらず、実力で昇格昇進

 コヤマドライビングスクールでは、男女ともに全員を契約社員として採用している。契約社員は1日5時間以上で月に130時間以上等の条件を満たせば、出社や退社の時間、休日も自分で決めることが可能。希望すれば職掌転換制度(年2回)により、正社員へ転換することもできる。正社員になると、3日出勤して1日休みという3勤1休の完全シフトとなる。
 契約社員であっても、定期昇給や育児・介護休暇等の制度は正社員と同様に適用され、契約社員の期間・正社員の期間にかかわりなく、やる気と実力で仕事の幅を増やすことができる。
 「自分の生活の時間も確保したいという方は契約社員のまま働くこともできます。ただし検定員などの仕事は契約社員の人はなれません。ですからすべての資格、ポストを求める方は正社員へ転換することができます。また、正社員から契約社員への転換も可能で、「子育て期間は契約社員に転換して無理なく仕事と家庭を両立し、長期的視野に立って仕事を継続できる」と社員から好評を得ています。

「E~AN BOX」を通し、“400人の脳”でアイデアを生む

 “社長の1人の脳で考えるよりも、社員400人の脳で考えよう”との思いから、小山氏は社員が思いついたことを投書できる「E~AN(いい案) BOX」を設置し、無記名での投書も受けている。
 「私が必ず目を通して、すぐにできそうなアイデアだったらすぐに動きますし、実行できるかできないかを考えなければいけない場合は、会議で検討して、その結果を発信者の方へ返答します。無記名の場合は掲示板に貼り出して返答します。社員からは様々な提案が寄せられ、そこから『子育て環境向上プロジェクト』など20以上のプロジェクトや委員会が生まれています」
 その他、E~AN BOXの提案をもとにカウンセリング窓口が新設され、託児所が拡充された。二子玉川校にある託児室「パパルキッズルーム」は、教習所としては大規模の30人定員で、教習生の子どもの一時預かりにかかるコストはすべて会社が負担している。この託児所は2006年に東京都の認証を受け、教習生だけでなく世田谷区内在住の方や社員も利用可能となった。
 コヤマドライビングスクールでは外国人や障がい者の教習にも力を入れており、希望する社員は外国語や手話などの講習を受け担当指導員になれる。
 「実際に『E~AN BOX』への提案は、女性社員のほうが絶対数が多いですし、当社では意見をかなりかたちにしています。女性社員に甘すぎると思っている社員もいるかもしれませんが、経営改革の視点においては、男性社員にとってデメリットになる話ではないのです。
 子育て支援制度、外国語や手話研修の受講、プロジェクト活動や手話イベントを含めて多額のコストがかかりますが、CS(顧客満足)を得るためにはES(社員満足)を得ることが必要です。それらの時間もコストも、社員教育の一環でもあると考えています」

業界全体のレベルアップを期し、国内外の見学者を受け入れる

 「今、マレーシアがものすごい勢いでモータリゼーションになっていて、マレーシアに教習所を作ろうという話があります。マレーシアではシンガポールの教習システムに則るべく法律化がされたのですが、シンガポールの教習所スタイルは日本をお手本にしていますので、日本のシステムをマレーシアに持ち込んでも、かなり通用します」
 ホームページを見て、マレーシア、シンガポール、コスタリカ、ザンビアからの見学者がいるという。国内の競合先からの見学者も後を絶たないが、日本の自動車業界全体がレベルアップするよう、見学者を受け入れているという。
 「今後ますます多様化が進む中、会社としても業界のリーディングカンパニーとなるよう、ダイバーシティにも取り組んでいきたいと思います」

10年後に管理職の半数を女性にしたい

 指導員には、普通自動車、自動二輪車(普通・大型)、トラック(中型・大型)などそれぞれの資格取得が必要であり、さらにそれぞれの技能を最終的にチェックする検定員や、高齢者教習指導など、多数の資格がある。「意欲のある社員はどんどんチャレンジしています。多くの指導員は男女共に、より上の段階の検定員に魅力を感じているようです」
 現在係長44名中女性は11名で、そのうち育児と両立している女性が2名で、夜遅い勤務はある程度免除される。また、管理職幹部候補者を対象とした研修を男女平等に行っている。今年9月には綱島校から初の女性次長が誕生した。
 「次長は早くても15~20年くらい勤めないと到達しないポジションです。少しずつ女性管理職も増えてきていますが、ちょうど結婚や子育ての時期と重なってきますので、両立が必要な時期をどう活かすかが今後の課題です。全体の割合からすると女性社員はまだ3割ですが、男女比率を半々にしていきたいと考えています。両立しながら仕事を継続し、子育てが終わったら全力で仕事をしていただく。5年でかなりの数の女性社員が係長になれると思いますし、10年後には次長の3分の1、将来的には管理職の半数が女性社員という会社にしたいですね」

一生勤める気持ちで会社を選んでほしい

 会社説明会のときは、いつも学生に「自分が行きたい道がわかっているなら、初志貫徹してその道を選ぶべきだ」と話しているという小山社長。悪いことを書くホームページはないのだから、インターネット情報だけを見て会社選択をするべきではない、と説く。
 「どの会社にもいい面と悪い面があり、私が会社説明会で自分の会社の話をするときも両面を話すようにしています。そして、自分の足で情報を集めるように伝えます。それには、職員でも他の事業所の誰でもいいから捕まえて、話を聞きなさいと。本音を聞いて、それから選ばないと、一生の問題ですからね。
 当社では基本的にリストラは行いません。リストラしないですむような会社にするにはどうしたらいいかを考えるほうが、実際リストラするときに考えるよりもずっと楽ですから。ですから、働く側も一生勤めるという気持ちで会社を選んでほしいですね」

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