WEBマガジン EVOLUTION Vol.4 リレーエッセイ

毎号各業界でご活躍の方にポジティブ・アクション推進に向けて自由にご発言いただくこのコーナー。第4回めは、慶應義塾大学商学部教授の八代充史氏に、今号のテーマでもある女性管理職の育成についてご執筆いただきました。

第4回 慶應義塾大学商学部教授 八代 充史

女性管理職を育成するためには

八代 充史氏

慶應義塾大学商学部教授
PROFILE

慶應義塾大学商学部教授。博士(商学)。
1987年3月慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。1996年4月慶應義塾大学商学部助教授。2003年4月から現職。
主要著書『大企業ホワイトカラーのキャリア』日本労働研究機構、1995年。『管理職層の人的資源管理』有斐閣、2002年。『人的資源管理論』中央経済社、2009年。

「女性管理職育成の必要性」論を超えて

 女性管理職の育成については、これまでどれだけの議論がなされたことか。少子高齢化社会では女性の活用が不可欠というものから、目標となる存在をつくることが他の女性のやる気を高めるというロールモデル、そして女性の特性を活かすことがメリットになるというものまで、文字通り百花斉放である。
 しかし、男女雇用機会均等法が施行されて今年で25年、「女性は結婚したら辞めるのが当然」、「職場結婚をしたら、女性が退職するのが当たり前」、こうした通念はすっかり過去の話となった。私は、この15年来人事担当者の1年制セミナーのお手伝いをしているが、以前は専ら男社会だったのが、最近はコンスタントに女性が参加するようになったのは、女性への人的投資の現れ、本当に喜ばしいことである。
 少々乱暴に言えば「女性活用のメリット」や「女性管理職育成の必要性」を説く時代は終わったのではないかと思う。現に人口の半数近くが女性なのだから、彼らを活用しないのは、人的資源の有効活用とは言えない。「女性を活用する」、「女性を管理職に登用する」のではなく、「適材適所で活用したら、たまたま女性だった」、「優秀な人材を管理職に登用したら、たまたま女性だった」、これが究極の姿であろう。
 ただし、残念ながら、現実はそこまで到達していない。女性活用の必要性を社会に浸透させるのが第1段階、女性の活用を促進するための制度を構築するのが第2段階、そして特段何もせず適材適所の自然体で女性が登用されていくのが到達点とすれば、我々が位置するのは、第2段階と第3段階の中間点であろう。

人的資源管理の「制度」と「運用」

 それでは、これからなすべきことは何か。人的資源管理は制度と運用の2本柱で動いており、女性管理職育成も例外ではありえない。「制度」については、ポジティブ・アクションに基づく女性管理職育成計画や育児休業制度、社内公募制度やコース別雇用制度・職種別採用など、最早出揃った感がある。問題となるのは、その「運用」である。
 例えば、企業特殊的訓練の蓄積を重視する日本の企業では、継続就業が管理職への途。この点、育児休業「制度」の法制化は女性の継続就業に向けた確かな一歩である。しかし、人員に余裕のある大企業はいざしらず、女性一人の抜けた穴が決定的な中堅規模企業では、未だに育児休業を取得し難い雰囲気があると聞く。また職場復帰後職能資格等級の昇格においても、「3年連続Aが昇格条件、育児休業取得者は取得前の評価はリセット」といった運用を行う企業もあるが、こうした評価制度の運用が女性の昇格に不利に働くのは明らかである。この点は、今回の育児・介護休業法の改正で不利益な取り扱いとして禁止されたが、人的資源管理の運用は、すべからく男女間で中立的なものでなければならないだろう。
 重い荷物を背負って急坂を汗一杯で登っていると、急に視界が開けて山の頂が目の前に迫ってくることがある。女性管理職の登用というピークは目の前にある、そう信じたい。

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