WEBマガジン EVOLUTION Vol.4 グッドプラクティス企業

第4回 第一生命保険株式会社

職員の9割を女性が占める第一生命保険株式会社では、1990年代より着実に女性登用を進め、2005年にはダイバーシティの専属部署を立ち上げるなど取組を加速。女性職員の発言力を高めることによってお客さまにより高品質のサービスを提供するという目的のもと、全社をあげて女性活躍推進に取り組んでいます。その取組内容や成果について、執行役員人事部長の川島貴志氏にお聞きしました。

役員に聞く

「いかに女性が活躍するか」こそが
企業競争力を高める

川島 貴志氏

第一生命保険株式会社 執行役員人事部長

川島 貴志
第一生命保険株式会社社
執行役員人事部長

PROFILE

1983年4月 第一生命保険相互会社入社。2004年4月 興銀第一ライフ・アセットマネジメント株式会社(現DIAMアセットマネジメント株式会社)部長待遇。2005年4月 人事部長。2009年4月より現職。

女性活躍推進は、競争力アップの経営戦略

-厚生労働省の均等・両立推進企業表彰において、均等推進企業部門とファミリー・フレンドリー企業部門で東京労働局長優良賞をダブル受賞されましたが、女性の活躍推進の必要性は十分に認識されていたということでしょうか。
川島氏 そうですね。保険会社はメーカーなどと違って、機械設備や工場があるわけではなく、人財そのものが会社の競争力になっています。特に実務担当者が担っている品質自体が、会社の競争力アップにつながるということがクローズアップされており、そのことを経営トップ以下が改めて確認したことが原点になっています。いまお客さまが見ているのは手続きの利便性やサービスのよさであり、その実務の担い手はほとんどが女性職員です。そこを磨くことは競争力を高めるための重要な命題であり、だからこそ女性活躍推進を経営戦略の一つと位置づけているのです。
 第一生命は1990年代から一般職の女性を「役付」(係長相当職)や「管理職」(課長相当職)へ登用するなど着実にダイバーシティを推進してきましたが、2005年に「イコールパートナーシップ推進室」(2008年に「ダイバーシティ推進室」に改称)という専属部署を立ち上げ、取組を加速してきました。またトップダウンに加えてボトムアップとして、本社・支社の所属ごとにダイバーシティ推進責任者と推進者を任命し、それぞれの職場でダイバーシティを進めています。推進責任者と推進者を合わせると数百名にものぼります。

-各所属において、どういうレベルの方が推進責任者や推進者に就くのですか。
川島氏 推進責任者は管理職が、推進者には係長相当職が就きます。特に推進者には、将来の管理職候補の女性職員を配置して、他の女性職員に対するロールモデルの役割も担ってもらっています。

社長以下、幹部総出の「ダイバーシティ推進大会」を開催

-全社をあげてダイバーシティを推進していらっしゃるのですね。
川島氏 第一生命におけるダイバーシティ推進の取組としては、障害者雇用にも真剣に取り組んでいます。また、最近ではアジアの国々の方を新卒で採用する等、文化・国籍の視点でのダイバーシティも進めています。ですが、目下最も力を入れて取り組んでいるのは女性の活躍推進です。昨年10月には「ダイバーシティ推進大会」を開催し、社長以下、全役員、全ダイバーシティ推進責任者と推進者が出席しました。社長の挨拶から始まって、ロールモデルによるディスカッション、現場における課題解決の好事例の紹介、推進者による決意表明などを行いました。

-つまり現場間で競わせて、推進者たちのやる気を引き出しているのですね。
川島氏 おっしゃるとおりです。一番進んでいる部署の事例を全社に知ってもらい、その方向に引っ張るのが目的です。大会が終わった後、推進責任者や推進者にかなりの意識変化が起こりましたし、社長以下役員も全員出席しましたので、ダイバーシティ推進は経営戦略の一つであり、女性活躍を推進することで経営課題に取り組んでいくということが強く認識されたようです。

-経営課題というのは、例えばどういうことですか。
川島氏 当社がこれまで以上にお客さまからお選びいただける保険会社となるためには、お客さまと当社の間の一つひとつのお手続きをより簡易で、かつスピーディーなものにしていく必要があります。そのためには、実務を担っている女性職員が自ら「こうやって『カイゼン』するべきです」と発案することが最もお客さま目線に近いと考えています。上位者からの指示待ちでは、良い発案は出てきません。お客さまと向き合ったときに感じたことを経営に直結させないと、物事が前進しないと考えます。

女性職員向けマネジメント研修で、経験不足のハンディを補う

-実務担当者の女性職員の発言力を引き出すために、どのような取組をされてきたのですか。
川島氏 まず2009年に総合職と一般職の枠組をなくし、「適財適所、能力とやる気のある人には、どんどんレベルの高い仕事をやってもらいます」としたことで、女性職員にとって「付加価値の高い職務を担うこと」、「上位職位を目指すこと」は特別なことではなくなってきました。ダイバーシティ推進の取組の裾野がより広がってきたように感じています。

-「付加価値の高い仕事」には、皆が自然と挑戦したのですか。
川島氏 所属内で、職員に対してどの職務を付与するのかは、所属長の判断に委ねています。ですので、先ほどご説明したように、各所属にダイバーシティ推進責任者を任命することで、「付加価値の高い職務付与」がボトムアップでも行われるようにしました。また、管理職が女性職員のOJTでの育成により一層前向きに取り組むように、管理職の人事評価項目の中に「ダイバーシティ推進の取組度合」を組み込みました。今では、より難易度の高い職務に対する「おもしろさ」を実感する女性職員も増えてきました。
 こうしたOJTでの取組に加えて、近い将来係長相当職、管理職(課長相当職)、部長職を狙える女性職員に対しては、選抜で「ポジティブアクションプログラム」を用意し、意識づけを行うと同時に、具体的なマネジメントスキルを教えています。

-ポジティブアクションプログラムは女性職員のみを対象にした研修とのことですが、男性に対してはそのような意識付けは必要ないのですか。
川島氏 男性には転勤があるので、そのなかで物事の見方が多面的になります。また、色々な上司に仕えたり、色々な部下をもつことが、マネジメント力を訓練する機会になっています。一方で、転勤が少ない女性職員はその業務には詳しくなりますし、みんなで力を合わせてというのは得意ですが、人の上に立って組織を動かすという意識は自然体ではなかなか身につかないので、OJTとOff-JTを通じて会社としての支援を行っています。

「キャリアサポートプログラム」により、キャリア形成への不安を解消

-キャリアサポートプログラムについて詳しく教えてください。
川島氏 上位の役割を担っていくうえでは、より幅広い視野を持つ必要があります。しかし、異動経験の少ない女性職員が、経験が少ないことによって上位を目指すことに不安を感じることがないよう、「キャリアサポートプログラム」として「社内・社外トレーニー制度」「キャリアチャレンジ制度」を設けました。
 社内トレーニー制度とは数日から1-2週間の期間で別の部署の仕事を体験する社内留学制度です。当初は希望者が90名ほどでしたが、今では年に約1400名の女性職員が参加しています。例えば支社の職員が本社のある部署と電話で連絡を取り合うと、「本社は現場目線で対応してくれない」といった不満を持つことが多くあります。私はそうした職員に「じゃあ、一度社内トレーニーとして本社に行って見てらっしゃい」と促しています。すると、本社は全国約80の支社を相手に業務をやっているので、標準化の観点からはやむを得ないこともある、といった印象を持ち、逆に支社に戻ってからそうした考えを支社内で広めてくれたりしています。また、ずっと事務職でお客さまと接したことがなかったけれど、コールセンターに行ってお客さまの生の声を聞いてニーズがわかったなど、視野を広げるよい機会になっているようです。また、こうした短期留学ではなく、希望して他の職務に実際に替わることのできる制度が「キャリアチャレンジ制度」です。毎年40名ぐらいの女性職員がこの制度に応募して、面接試験を受けたうえで自分が就きたい仕事に移っています。

-社外トレーニーというユニークな制度もお持ちのようですね。
川島氏 社外トレーニー制度は2010年から始めていますが、様々な業種の会社に67名を派遣しました。先方企業のご協力を得て、3日間から2週間程度の期間、責任を持ってバリバリやっていらっしゃる女性社員の活躍現場を見に行きます。世の中では女性社員が責任の重い仕事を担うことが当然であることを自分の目で見て、みんな帰ってきたら「目からうろこが落ちました」と話しています。

18時半退社の実行で、全社の月平均残業時間は5時間に

-ファミリー・フレンドリー制度についてはいかがですか。
川島氏 以前は結婚や出産をきっかけに退社する女性職員も少なくありませんでした。しかし、一定の経験とキャリアを積んだ職員が会社から去ってしまうことは、その所属にとっても、会社全体としても大きな損失です。そこで、ライフイベントでキァリアが中断しないように、かなり早い時期から法令を上回るファミリー・フレンドリー制度を用意してきました。これらの制度を活用することは社内では当然となってきており、例えば「育児サービス経費補助」は4000名が利用しています。また、社命によって転居を伴う異動がないエリア職員が、家族の転勤をきっかけとして転居先に転勤できる「ふぁみりぃ転勤制度」についても毎年何十名単位で利用されています(企業データ参照)。こうした取組の結果、離職率もどんどん低下して今は2%ぐらいです。
 またワーク・ライフ・バランスの取組の一つとして、2年前から会社の終業時刻を管理職と役付クラスが19時半、それ以外は18時半としています。これは自分を磨くための勉強にあててもらうための取組なので、社内ではワークラーニングバランスとして自己啓発の取組をあわせて推奨しています。こうした「早帰り」は、いったん定着すると当たり前になり、金融・保険業の月平均残業時間の16時間(厚生労働省毎月勤労統計調査)に比べ、第一生命は5時間です。そのほかに、「パパトレーニング育児休業」という愛称をつけて男性の育児休暇取得を推奨した結果、今年度の男性の育児休暇取得者は44名と、昨年度の3名から大幅に増加しました。
 ワーク・ライフ・バランスに向けた取組は、結果として女性と男性の間にあった「時間」というハンディキャップを取り除くことにつながりました。能力は女性も男性と同等であり、差はありません。キャリアサポートやポジティブアクションのプログラムも用意しました。ワーク・ライフ・バランスの制度も充実しました。女性職員に対しては、「活躍する環境は十分に整いました。さあ、皆さんが会社の成長戦略に向けた主役となって、頑張っていきましょう」と伝えています。

女性管理職数は5年前の倍増、意識も大きく向上

-取組の成果について、どのような手応えを感じていますか。
川島氏 先ほどから申し上げている歩みは2005年から加速してきましたが、そのころの女性管理職は76名、管理職に占める比率も3.8%でしたが、現在は163名、6.6%とほぼ倍になりました。管理職に占める女性の割合を早期に1割以上とするために、2015年の女性管理職数を210名以上とするのが今後の目標です。また、女性職員のうち「上位の職位をめざすことを希望するか」という問いに対する回答は、2008年には4分の1くらいしか「はい」と答えていませんでしたが、今は4割の人が「めざしたい」と答えています。
 ダイバーシティ推進は会社の経営戦略であり、役員も自分がその一翼を担っているという意識が高まってきました。役員が全国の支社を訪問して職員と直接経営課題について意見交換する「役員と語る」の中で、役員自らが「なぜ女性の活躍推進が必要なのか」を語るなど、女性職員の意識向上のための取組を率先垂範で進めています。
 先ほどもお話ししたように、現場の実務が持つ品質そのものが、保険会社の競争力を左右するようになってきました。従来は会社の規模が注目される場面が多かったと思いますが、今のお客さまは、手続きの利便性やサービスの良さをご覧になっていて、それが会社の競争力としてクローズアップされてきています。実務の担い手の多くは女性職員であり、女性職員のモラルアップ、活用、責任ある発言を引き出す以外にはないのです。そこを磨くことが経営戦略でもあり、重要な命題です。

-着実な仕事をして、いい提案をして、貢献をすれば評価してもらえるとうれしいですよね。
川島氏 ダイバーシティという言葉を掲げて引っ張ってきましたが、ダイバーシティという言葉が薄らぐくらいになるといいと思っています。当たり前になっているということですね。

-本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。

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