小売業における女性の活躍の現状

それでは、現在小売業で働く女性はどのような活躍の現状にあるでしょう。法律の整備などもあって、女性の活躍推進が多様な業種で進められてきたことから、この点に関して小売業の優位性というものは、以前に比べると相対的に低下しているように思われます。男性中心であった製造業や建設業、運輸業などにも多くの女性が進出し、多様な業界で女性の活躍を進めるようになり、女性からみて働く場の選択肢は増えています。小売業界にとっては、意欲や能力のある女性の人材マーケットにおける企業間の競争が激化してきたといえるでしょう。

2011年度にスーパーマーケット業のポジティブ・アクションを推進するための「『見える化』支援ツール」の開発に私が関わった関係から、小売業の女性の活躍の現状について、スーパーマーケット業を例に見ていきたいと思います。以下で紹介するデータは、この「『見える化』支援ツール」開発のための収集したものです。

スーパーマーケット業で働く人の圧倒的多数が女性です。ただし正社員に限定すると、女性の比率は1/4程度とかなり低くなります。正社員の採用段階では半数近い女性比率を示していますが、その後結婚や出産などのライフイベントを経るにつれて女性の離職が男性よりも多くなっていくために、男女の定着に差が出ています。

女性の定着と関連して、特に管理職比率が低いことが課題としてあげられます。店舗の販売職はもとより、売り場の責任者レベルまでは女性の活躍が進んできましたが、店長層以上への登用となるときわめて少数で、この点に課題があります。店長職は、店舗での判断業務、トラブルやクレーム処理など臨機応変な対応が求められ、それと関連して時間的拘束が長く、時間的および精神的な負担感が大きい職種といえます。このため、育児責任を担う従業員には、店長職の責任を任せることができないと考えられてきました。女性も、仕事と家庭の両立が難しいと考えて店長職を敬遠する傾向にあります。さらに、広域に店舗展開する場合には、多様な店舗の経験が昇進には不可欠と考えられ、転居転勤や遠距離通勤が難しい子育て期の女性はその経験が不足し、管理職昇進が難しいという状況につながりました。

女性が活躍できる環境整備が重要に

現状の店舗運営の仕方を前提にしていると、女性の登用はなかなか進みません。特に小売業は、長期的にみると営業時間が長時間化してきており、店舗管理を担う管理職の負荷が増えてきていると考えられます。優秀で意欲のある女性を管理職に登用し能力を発揮してもらうには、店長職に代表される管理職の働き方を見直すことが必要になります。

小売業の中には、営業時間が長くなれば店長がすべての時間をカバーすることは難しいと割り切って、店長の補佐役の権限を拡大し、店長と店長補佐で適宜分担をカバーしながら店舗管理を進め、結果として店長の負荷が軽減して労働時間が短くなり、女性の登用が進んだ事例もあります。ハードな管理職の仕事は、女性だけでなく男性からも敬遠される傾向が出てきています。これまでの仕事の進め方を、女性の活躍推進を切り口にして見直すことで、男性も含めた従業員全体の能力発揮や働きやすさの改善につながるケースは少なくありません。

また、小売業においては、管理職への昇進以外にも、バイヤーや商品開発など専門的な分野で女性が能力を発揮できる機会が少なくありません。高度な専門性を活かしてスペシャリスト人材として活躍を希望する女性は多く、こうした専門性志向の人材への対応も小売業界の重要なテーマです。従業員自身がどのようなキャリアの方向を目指すのかに向き合う機会を作る、個々人のキャリア開発の希望を組織的に把握して組織の方向性とすり合わせながら育成を進める、専門的な分野で活躍する人材の処遇のあり方を検討する、など、スペシャリスト人材に対応するためにいくつかの課題を解決していくことが必要です。

小売業界は、女性が多いこともあって仕事と家庭の両立支援策の充実を進める企業は多いです。しかし、それでも女性の定着が進まないとすれば、女性が自身の将来に展望が持てないというキャリア見通しに関する課題を考えてみる必要があります。現在の仕事が将来にどのようにつながっていくのか、自分の5年後、10年後の姿を見据えつつどのように組織に貢献すればよいのかを考えることができれば、女性の定着も進み、育成もやりやすくなるでしょう。

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